こんな話があります。「老後30年暮らしていくには、あと2000万円必要になる」。
しかし現役で働くフリーランスの職人の多くは「自分が腕を上げて稼いで貯金すればいい」「親方や棟梁は70超えてるけどまだ現役だし、老後資金なんか必要ない」と考えがちです。
ですが将来のことは誰にも分かりません。本当に今のままでいいと言い切れますか?
今からでも遅くはありません。職人や一人親方でも利用できる年金や退職金について勉強していきましょう!
資金準備は甘えじゃない!老後2000万円問題と向き合おう
建設業界の職人の間では「老後に年金・社会保険に頼るのは甘え」「自分の力で稼いで貯金したほうがいい」と考える人が今も少なからずいます。
しかしそれは過去の話。現在・将来の建設業職人は過去の職人以上に老後2000万円問題と本気で向き合う必要があるんです。
老後資金を準備しない職人が多い理由
代表的な老後資金は年金ですが、社会保険に頼るのを良しとしない職人の他に「少ない月給から社会保険料を抜かれたら暮らしていけない」と主張する人もいます。
また会社と雇用契約がある人の場合、事業主が「従業員の年金を負担していたら経営が成り立たないから」と支払わないケースもあります。
【出典:国土交通省 建設業における保険未加入問題に関するQ&A】
長く生きる・働くからこそ老後資金は重要
「今までずっとこうしてきたんだから、これからも一緒でいい」と考える職人、事業主もいるでしょう。
しかし内閣府 平均寿命の推移によると平均寿命は男性79歳、女性86歳、戦後一貫して長くなり続けており、2060年には男性84歳、女性90歳になると言われています。
今の親方や棟梁のように70代まで現役で働いたとしても、引退後10余年人生が続く可能性もあります。そうなった時、果たして今の貯金だけで暮らしていけると言えますか?
建設業職人の老後資金はどう準備する?どんな制度がある?
「将来が不安になってきた…今からでも老後資金を準備したい」と思い立ったら、まずは年金と退職金の準備をしましょう。
「もう自分もいいトシだし、今から入ってももらえないでしょ」「会社員じゃないのに退職金なんて出るわけない」と諦めるのはまだ早いです!
職人・一人親方は国民年金へ
多方面から仕事を請け負うフリーランスの職人・一人親方は国民年金に加入する必要があります。
国民年金は以前は加入期間25年を満たさないと受け取れない制度でしたが、現在は10年に短縮されています。今からじゃもう遅いと諦めず、最寄りの年金事務所に相談しましょう。
退職金がもらえる建退共を利用しよう
実はフリーの職人・一人親方も退職金がもらえます。建設業界には日額320円を収めると、将来退職金が受け取れる「建設業退職金共済制度(建退共)」があるんです。
基本的には会社単位で加入しますが、個人でも任意組合を作れば加入可能です。建設業界の繋がりで似た境遇の職人が近くにいる人も多いはず。老後2000万円問題に悩んでいるなら、声をかけてみてはいかがでしょうか?
それでも将来は不透明…知っておくべき年金と退職金のリスク
「年金には加入してるし、建退共にも入ってる。これで老後は安泰だな!」
確かに両方とも建設業職人の老後2000万円問題解決に欠かせない制度です。しかし、この2つにも受取不可・減額のリスクがあるんです。
年金の加入・支払ができていないかも?
職人・一人親方の中には、特定の事業者からの仕事を専任で請け負っている人もいます。その場合、「雇用契約」を結んでいれば事業者が国民年金・厚生年金の手続きをしてくれますが、前述の通り実は加入手続きをしていない場合があります。
また、雇用契約だと思っていたのに実は「請負契約」にされていた場合、国民年金の加入手続きは自分でしなくてはいけません。
つまり「てっきり加入してると思ってたのに、加入できてなかった」恐れがあるので、今一度年金事務所と事業者に確認してくださいね。
もらえる退職金が目減りする
建退共は集めた資金を運用し、利益を得ることで退職金を支払っています。しかし2021年から運用利回りが3.0%から1.3%にマイナス改定され、従来よりも受け取れる退職金が減額されてしまいました。
中には退職金が100万円目減りした人もいますが、将来同じことが起こらないとも限りません。加入すれば安心ではありますが、目減りのリスクも視野にいれておく必要があります。
【出典:中日新聞 寝耳に水、退職金が減る 建設業界の共済、利回り3%→1.3%に】
まとめ
・建設業の職人・一人親方の中には老後2000万円問題に無関心な人も多い
・平均寿命が伸びている以上、老後2000万円問題は真剣に向き合うべき
・フリーランス職人は国民年金、建退共への加入がおすすめ
・年金・建退共にも受取不可・減額のリスクはある
建設業界では全体の約4割が社会保険に加入していないと言われ、政府・関係省庁も加入率引き上げに奔走しています。その政策の1つとしてインボイス制度も今後導入されていきそうです。
賃金の安さや古くからの慣習など根深い問題もありますが、将来のために国や業界が用意したセーフティネットを利用しないのは非常にもったいないことです。
加入した上でのリスクもあるとはいえ、加入しなければさらに大きなリスクを抱えてしまいます。今からでも遅くありません。引退後も自分らしく豊かに暮らせるよう、今のうちに備えておきましょう。